SHOWER MARK

Dai Aoki

青木 大

Dai Aoki

青木 大(Dai Aoki)。1978年愛知県生まれ。ブックディレクター。2016年、香川県に古本屋「かまんよ書店」をオープン。2017年、菊池寛通り店をオープンすると共に、最近では、本をモノと交換する物々交換会など、本に関連した新しいイベントや試みを行なっている。

  • 2017年Culture & Art Book Fair in Taipeiに出展

www.kamanyo.com

Artist Interview

SHOWER:THE SHOWER GALLERYの3回目となる展示は「かまんよ書店」の青木大さんによる展示です。青木さん、どうぞよろしくお願いします。

Aoki:はい、宜しくお願いします。
まずは、僕の自己紹介から。「かまんよ書店」という本屋の店主として本の販売をしているうちに、ちょっと人と違うことをやりたいなと思って、色んなお店の中に本が置いてある空間をつくるという仕事をさせていただいています。花屋の上にある菊池寛通りのお店もその一つ、台湾のお店もその一つです。
それ以外にもいろんなイベントに出店することもあり、サンポート高松で主に週末に行われている「さぬきマルシェ(主催 香川県)」では、毎回イベントに合わせて本屋を一からつくっています。この前は大道芸フェスだったので、大道芸に関係のある本を探したりとか、獅子舞イベントに合わせた時は日本の祭りに関係する本を集めたりしました。お客さんが本を手にとって自分の意図を理解してもらえた瞬間はすごく嬉しくて、そういうことがTHE SHOWER GALLERYさんとできないかと話をしたのがきっかけで、今回の展示をさせてもらうことになりました。

SHOWER:ギャラリーからの展示オファーがあった時は、どう思いましたか?

Aoki:正直、怖かったですね。今まではイラストレーターさんや写真家さんの個展だったので、お客さんにどう思われるかなというのがありました。それと、この広い会場で本屋をするという話だと思っていたので、結構ハードだなとは思ったんですけど。よくよく話を聞いてみるとそういうことじゃなかった(笑)。

SHOWER:今回の展示コンセプトは、絵画やアートの価値を再認識してもらうために「画集の絵画を切り取って額装して、あたかも絵画のように販売して買ってもらう。絵画が売れた時には、元々の画集もついてくるので、結果的に画集1冊を買ったことになる」という企画なんですけど。

Aoki:このアイディアは、「紙のフェア」というイベントでの経験があって思いついたものです。500冊の本をバーっと並べて販売してみたのですが、半日が経っても本が1冊も売れなくて(笑)。どうしようかなと思った時に、隣を見たらポスターを安売りしてる本屋さんがあったんですよ。僕も本の他にバラ売りになっている絵が手元にあったので、真似をして売ってみました。でも全然売れなくて(笑)。値下げしても全然売れなかったので、逆に値段が安いから売れないのかなと思って、3,700円にしてみたら1枚売れ、さらに値段をあげていっても売れていったんです(笑)。
そこで思いついたのが、売れにくい大型の画集をバラ売りの絵として売る方法です。画集には素晴らしい絵がたくさん掲載されているので、その中の絵をバラ売りして適正な価格で販売すれば、画集として販売するよりも結果的に価値が上がり、買った人たちもおもしろがってくれるのではないかと思いました。
適正価格をいくらにするかというのは悩みましたが、マチスの絵を切り取って額装して「3億円なんで買ってください!」ってやっても絶対買ってくれないじゃないですか(笑)。
そこで、額の値段と本の値段を足して価格を決めました。僕は古道具の資格を持っているので、古道具の市場でレトロなアンティークな額が買えるんです。自分としては納得のいく価格設定ができたと思っています。

SHOWER:1冊の本から抜いたものであれば、3枚の絵画も1枚の絵画も1冊の本の値段なので、とってもお得ですね(笑)。今回はそういう新しい本の売り方に挑戦していますが、展示タイトルにはどういった意味があるんでしょうか?

Aoki:今回の展示は「Who am I ?」というタイトルなんですが、これはTHE SHOWER GALLERYさんからアイディアをいただきました。あるアーティストをテーマに展示したのですが、その人の描いた絵は展示せずに表現できないかというアイディアから、アーティストに関わりの深い人の絵を並べることで「Who am I ?」の問いかけに答えを浮かび上がらせるような空間づくりを行いました。
関係のある日本の画家では、東京藝大に通っていた時の同級生の小磯良平さんや、実質の師匠である藤島武二さん。東京藝大で教授をされていた黒田清輝さんがいます。 ヨーロッパの画家では、マチスとピカソがいます。この二人の作品にすごく影響を受けてしまって、その作風から逃れられないということもあったようです。
“Who”は、人との繋がりをすごく大切にされる方で、関わりのある方の色々な作風も取り入れてそこから脱却できない時期もあったけど、最終的には自分の表現としてうまく昇華しています。
皆さんお分かりだと思うんですけど、敢えてここは“Who”が誰かということは言わずに悶々として帰っていただこうかなと思いますが、どうしても教えて欲しいという方には後でお教えします(笑)。
あとはアート関係の本なんかも並べていますけど、“Who”に縁のある本を並べています。猫とか鳥とか色んな小動物が好きだったんですけど、そういったものに関係のある本を並べていますので、また興味があったらご覧ください。

SHOWER:今回このような新しい本の展示の空間をつくっていただきました。展示を通して伝えたいメッセージなどはありますか?

Aoki:本を並べて売るだけの時代っていうのは正直終わりかなと思っています。例えばこの本が欲しいと言ってタイトルを指定されたりだとか、あるいは名指しで〇〇文学全集が欲しいって言われることがあるんですけど、それはどちらかというと大手の本屋さんにお任せしていくことなのかなと思います。
それよりも、僕はその人がこの本を読みたいという気持ちを高ぶらせる仕事をやりたいんです。今回のこの展示も、“Who”って誰だろうな、“Who”に関係ある本が欲しいな、とか。アートにそこまで興味はなかったけど、ここへ来て芸術分野に興味が出たから今日は画集を1冊見て帰ろうと思ってくれたら良いですね。それはこの展示だけでなく、図書館でも大手の本屋さんでももちろん良いのですが。そういった今まで知りえなかった世界の扉を少し開けたり、その人の興味を広げるということをやっていきたいっていうのがあります。

SHOWER:興味を広げてもらうための接客のコツがあるのでしょうか?

Aoki:基本的には接客の時間も大切なんですけど、お客さんがこれが欲しいとか、こういう本が見たいと思う瞬間は、お店以外のこういった展示の場とか、普段の生活の中に出たりするので、そういうところにも気を配っています。
それと、本のある空間づくりをやってますね。花屋の中に本屋をつくったり、レストランの中に本屋をつくったりしています。まあ、なかなか大変で、レストランの方が「本どうですか?」と一生懸命に接客してくれてるんですけど、お腹がへっている人に本を勧めても読んでくれないことの方が多い(笑)。ただ、やってみないとわからないことってあると思うので、本のある空間をつくって興味をもってもらう機会は増やしたいと思ってます。
ホームグラウンドである本店も大切にしつつ、今後もこのような機会があったら期間限定でやってみたいですね。

SHOWER:(かまんよ書店)本店は普通の家みたいな落ち着く感じもあって、本がゆっくり読めるいい場所ですよね。

Aoki:ありがとうございます。本店は川部町という高松空港の方にあるんですけど、そこには本を4000冊ほど並べています。何度か言われたのが「ここって静かでいい場所ですよね」って。田んぼの真ん中にあって、静かに落ち着いて本と向き合える空間というのはありそうでないので、そういうコンセプトもいいなと思っています。寝転がって本が読める空間があるので、また良かったら。

SHOWER:「物々交換会」という変わった試みもされてますが、今後やっていきたいことはありますか?

Aoki:「物々交換会」は、コピーライターの川上徹也さんからヒントを頂いてやったものですね。今回の展示もそうですけど、今までの本屋さんがやってないことを片っ端からやっていこうかなと思っています。バチくらいしか今のところ当たってないですけど、どこで何が当たるか分からないので(笑)。お話いただいたものは吟味して、一つずつ丁寧にやっていきたいですね。

SHOWER:素晴らしいですね。バージョンアップした「かまんよ書店」を拝見する機会を楽しみにしてます!

本日は、ありがとうございました。

※本インタビューは、2017年10月6日のアーティスト・トークを記録・編集したものです。

Date:2017.10.6

Interview by THE SHOWER GALLERY

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