SHOWER MARK

Keita Okusora

オクソラケイタ

Keita Okusora

オクソラケイタ。香川県在住。グラフィックデザイナー。2012年より香川を拠点にアーティスト活動を開始。フォトコラージュを用いて様々なモチーフを融合させ、リアリティのある非現実な世界観と、そこに漂う空気感を感じれるような作品を目指す。

  • 2014年Pen×Adobe デザインコンテスト 最優秀賞
  • 2015年ARTDIVE EXHIBITION 出展
  • 2016年Adobe Take10 contest 入賞
  • 2017年アジアデジタルアート大賞展 FUKUOKA 入賞

www.okusorakeita.tumblr.com

Artist Interview

SHOWER:THE SHOWER GALLERY4回目となる展示はグラフィックデザイナーのオクソラケイタさんです。よろしくお願いします。

Okusora:よろしくお願いします。

SHOWER:今までの作品が実際に並んで展示されているのを見ていかがですか?

Okusora: 今まではデジタルでつくっている作品ばかりなので、現実にこういった形で展示された空間が生まれたというのは、僕自身も気づかなかった部分があるというか。展示してみることで、改めて自分の作品と向き合える良い経験になったなと思っています。

SHOWER:並べて見ると分かりやすいですが、昔の作品と今の作品では少しづつ作風が変化してますよね。

Okusora: そうですね。普段はグラフィックデザインの仕事をしているんですけど、自分の作品はプライベートワークとして仕事とは別でつくり始めたんですが、最初の作品はグラフィックデザインの派生のような作品だったような気がします。
技法としては昔から変わらずにデジタルコラージュという、いくつかの違う素材を組み合わせて一つの違う作品をつくるということをやっています。つくり方は変わってないような気がしますが、作品に対してどういうアプローチにするかということを考えながらつくっていく中で表現の方法が変わっていったという感じです。

SHOWER:最初の頃は世界観をつくるというよりは、合成の技法を試しながら作品をつくっているという印象も受けました。

Okusora: そうですね。僕は作品をネットにアップして発信することをずっと続けているんですけど、おっしゃっていただいたような感じで、初期の頃の作品をネットで見てくれた方が「技術としては問題ないけど、作品として見るとフォトショップの教科書に出てくるようなものにしか見えない」と言われまして…。その言葉を頂いてから、どういう世界観でどういう表現をしていくかという事を考えるようになって意識が変わりました。

SHOWER:確かに、ここ最近の作品を見ると、オクソラさんの作品だと分かるような共通の世界観がありますね。

Okusora:ここ最近の作品は、昨年末くらいから制作をスタートさせたんですけど。今までの作品は一つで完成というか、それで終わりという感じだったんですよ。これからは、一つのテーマを表現するのに4つとか2つの作品を組み合わせることで、大きな一つのシリーズ作品にするっていうのを試していこうかなっていうのがあります。年内で考えているのはあと2作品をつくって、更にもう1シリーズつくりたいという目標を立てています。

SHOWER:もう2ヶ月位ですけど(笑)。

Okusora:そうなんですよ(笑)。

SHOWER:個展のタイトル「There there」というのは、どういう理由で付けられたんでしょうか?

Okusora:タイトルはすごく悩みました…。「There there」の意味としては、「そこへ」とか「ここへ」という、意味なんですけど。最近思っていることがあって、作品をつくる時に感情だったりとかその時の思いだったりとか、決して目に見えないものをどういう風にヴィジュアルとして表現できるかということを考えていて、見えないけどそばにあったり、感じるものがあると思うんですけど。
今回の展示で、そこには見えない何かがあるのかもしれないという、そういうものを感じてもらえる展示になればいいなと思って、「There there」というタイトルにしました。

SHOWER:フォトコラージュという技法は知っているんですが、オクソラさんの作品はどうつくられているのかなというのが凄く気になります。

Okusora:基本的にPhotoshop(フォトショップ)という画像編集ソフトを使うんですけど。Photoshopにはレイヤーというオブジェクトの階層を分けられる概念があって、そのレイヤーを重ねて奥行きを出しながらつくり上げていきます。 複雑なので難しく見えるかもしれないですが、作業としては単純な作業です。難しい技術は全然使ってないので、フォトショップが使える人なら知っているような作業を繰り返して作品をつくっていきます。
絵を描く人も一緒だと思うんですけど、絵を描くひとつひとつの技術はそこまで高くなくても良くて、それよりもどういう構図にしたいかとか、どういう形に落とし込んでいくかっていうのが凄く大事だと思います。

SHOWER:作品をつくる前に大体のイメージみたいなものをつくられて取り掛かると思うんですけど、どこまで完成のイメージをされてるんですか?

Okusora:割合で言うと全体の20%いかないくらいです。例えば、海の中に沈んでいる世界とメインの女の子が何となくイメージとしてあって、そこからつくりながら考えていくと言う形です。

SHOWER:モチーフに女性が多いのは何かこだわりがあるんですか?

Okusora:これはたまに言われるんですけど、実は女性っていうところにはこだわりはないです。ただ、僕が表現したいと思っているのは儚さだったり脆さだったりするので、イメージとして男性よりは女性というのが自分の考えているものに合うのかなというのがあります。もしかしたら今後は男性でつくるっていうのもあるかもしれないですね。

SHOWER:それと気になったのが、顔が隠されている作品が多いんですが、それには何か意味が隠されていたりするんですか?

Okusora:それは、顔というより目なんですけど。人の目ってすごく力が強いもので、グラフィックの仕事をする時にも、あえて目線を外して撮ってもらったりするんですね。絵として目線があった時に、そこだけが強調されて強くなるイメージがあって、隠すことによって全体的な感覚がブレずに表現したいものが伝わるんじゃないかなと思っています。

SHOWER:匿名性というか、感情移入のしやすさみたいなこともあるのかもしれないですね。誰かを特定しないことで作品に自分を投影させることができるような気もします。

Okusora:そうですね。いずれ表情によって目線が必要な場合は出していこうとは思うんですけど、今はそういうものがない方がより世界観が出るんじゃないかと思います。

SHOWER:今後つくられる予定のシリーズ作品制作が終わった後に、つくりたい作品の構想はあるんですか?

Okusora:まだないです(笑)。雰囲気みたいなものだけ決まってるんですけど、まだちょっとわからないですね。今つくってるシリーズに近いものになるとは思います。
空や雲のイメージで、今回展示しているものの中に、人が落ちていった後の状態を描いた作品があるんですけど、次回の作品は雲の方に登っていくようなイメージのもになるかなと思っています。

SHOWER:ちょっと明るいイメージになるんですか?

Okusora: 明るくはならないです、暗いのは暗いです(笑)。ヴィジュアルとしては明るさはないですけど、落ちたからこその強さや前向きなものをテーマとして伝えられたらなっていうのがあります。 プラスのテーマを暗めのヴィジュアルで表現するからこそ、より反対の思いが際立ってくるのかなって思っています。

SHOWER:作品だけ見ているとそのメッセージを感じるのはなかなか難しいですけど、実際に聞くと新鮮な目で作品を見られますね。逆のメッセージが込められていたとは!

Okusora:そうですね。でも、あまりメッセージとかそんなに伝えたいとは思っていなくて。作品を通して僕の思っていることを感じてほしいというよりは、これを見た方がそれぞれ何か感じることがあればいいなと思っています。ただ聞かれたら応えますけど(笑)。

SHOWER:じゃあ、あまり作品のメッセージについて聞かれることってないんですか?

Okusora:そうですね。これを喋ったのはここでが初めてです(笑)。

SHOWER:そうなんですか!!!

Okusora:はい。そうですね(笑)。

SHOWER:お仕事ではデザイナーをされていて、何かをつくるということで言えば違いが無いように見えますが、お仕事のときとアーティストのときの違いみたいなものってありますか?

Okusora: 仕事と作品づくりの違いでいうと、制限があるかないかが一番大きいところだと思いますね。仕事では広告系のデザインをしているんですけど、色んな制限があります。その制限の枠の中だけでどうやって良いものをつくるかって考えるのが広告デザイン。作品づくりは何も制限がない状態で自由にやって良いと考えています。
デザインとプライベートワークでは発想自体が変わってきますが、広告デザインにしても自由な発想は大事なことなので、作品をつくることでデザインの方に役に立てばいいなっていうのはすごくあります。

SHOWER:制限があるからこそつくれることがあるので、自由な発想でつくれと言われても僕には難しいなと思います(笑)。

Okusora:自由と言いながら自分なりの制限というのはどうしても出てきます。けど、それも含めてすべての責任というか、最終的には自分が思ったことをつくり上げることにおいては自分を信じ切るというのは大きなところかなとは思いますね。

SHOWER:ありがとうございます。それでは質問がある方は、いらっしゃいますか?

Visitor:初期の作品を批判されたおかげで、そこから世界観を考えるようになったとおっしゃられてたんですけど。何か映画を見たとか、この本を見たとか、この絵を見たとか、世界観を広げるきっかけになったものが具体的にあれば教えてください。

Okusora:それを言われてから他の方がつくっているデジタルコラージュ系の作品には興味がなくて、ほとんど見ないですね。いいなと思うのは日本画だったり、映像やアニメーションだったりとか、ジャンルが全然違うもののほうが刺激になります。
デジタルコラージュをやってる人は海外の方が多いと思うんですよ。あまりそういうのを見てしまうと作風を近づけようとしてしまうんで、そうなってしまうのが怖くて。それよりも自分のできる技術を使って、デジタルコラージュというものを使いながら、他の作風とかにアプローチ出来るようになればなと考えています。
本も好きなので、本を呼んだりとか。あと2年前くらいに鈴木理策さんという有名な写真家さんが作品展をされていたんですけど、その時の展示ではロードムービーのような作風の中にシュルレアリスムを感じる写真も撮られていて。そういう作品とか全然ジャンルが違うんですけど、表現の仕方とかすごく参考になります。シュルレアリスム系の作品はそんなに好きではないんですけど、実は…。

SHOWER:そうなんですか!?人の手と顔の組み合わせとか、一種のシュルレアリスムみたいな感じを受け取るような気がしました。

Okusora:シュルレアリスム的だと感じられる方も多いとは思うんですけど、そこからは外れた作品をつくりたいです。そこはちょっと違いが難しいんですけど。ダリはそうでもないですけどマグリットは好きなんですよ。

SHOWER:他に質問がある方はいらっしゃいますか?

Visitor:絵のように見える作品が写真という感じがしないんですけど、それはどういう風に表現してるんですか?

Okusora:ちなみに、作品は基本的に描いていなくて、ほとんどが写真になります。写真に加工を重ねることによって写真感を消しています。絵画的な質感や雰囲気を出してみたいと思った時があって、そういうアプローチでつくった作品です。
奥から3つ目の作品は、イラストより絵画という風に言われる事が多いです。それは狙い通りで、絵画でも日本画に近い雰囲気を出したくて、デジタルコラージュらしい質感をなくそうと思ってつくりました。 デジタル的なものであれば、今までの経験上でどういう風に作成して行けば良いかがわかるので、大体の時間がわかるのですが、初めて挑戦することだったので、やりながら試すようなところがあり、これは今までの作品の中で一番時間がかかりましたね。

SHOWER:絵画的な表現に時間をとられた言われてましたもんね。
普段デザイナーをされてますが、THE SHOWER GALLERYとのコラボグッズZINEのデザインを、人に任せてみてどうでしたか?

Okusora:初めての体験だったので、凄く新鮮でしたね。実は、どういうものが上がって来ても、OKするつもりでした(笑)。

SHOWER:え!そうなんですか(笑)。

Okusora:そこは任せたいというのがあって。僕の作品を使って作ってもらうというコンセプトだと思ったので、それを僕が修正してしまうと何か違ったものになってしまうのではないかと思って。でも、良いものができて良かったです。

SHOWER:そうですね。ぜひ、みなさんに手にとって貰えたら嬉しいです。本日は、どうもありがとうございました!

※本インタビューは、2017年10月20日のアーティスト・トークを記録・編集したものです。

Date:2017.10.20

Interview by THE SHOWER GALLERY

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