SHOWER MARK

Saki Machida

町田 早季

Saki Machida

町田早季(Saki Machida)。埼玉県在住。桑沢デザイン研究所卒。イラストレーター。CDジャケットやイベント等のイラストレーションを手がける。

  • 2013年SAKI SAKI (제비 다방 Salon Jebi, Seoul, Korea)
  • 2015年船乗りの為の朗読 (undō 運動, Minowa, Tokyo)
  • 2017年astilbe (古民家ギャラリーイシワタリ, Kamakura, Kanagawa)

www.machidasaki.com

Artist Interview

SHOWER:THE SHOWER GALLERY5回目となる展示は、東京で活躍されているイラストレーターのnorahiさんと町田早季さんのお二人です。よろしくお願いします。

norahi & Machida:よろしくお願いします。

SHOWER:今回の展示テーマが「houhil(ホウヒル)」になるまで、どんな経緯があったんですか?

norahi: 元々は町田が香川県について調べていて、平賀源内が香川県出身だと分かって。「エレキテル」や「土用の丑の日」を考えたことが有名ですけど、その人が「放屁論」という本を書いていたのを発見して。そこから「放屁論」て何だ!?となり調べ始めました。屁を放つと書いて「放屁論」なんですが。
江戸時代に屁を使って芸をする芸人がいたらしいんですよ。その芸人にえらく感動した平賀源内がそれを題材にした「放屁論」という本を書いたんです。今だったらオナラが当たり前に笑いに繋がるけど、文化が発展しきってない時代に、屁を放つ芸をする人に感動して「放屁論」という本まで書いてる平賀源内は、すごく進んでいる人だと思って。
私たちはすごく感動しまして、文化の発展にも貢献した平賀源内という人物を題材にしようっていう話になりました。ただタイトルとして、放屁という言葉を入れただけだと、ちょっとかっこよくないと言う話になって(笑)。「屁をひる」という言葉と、放屁という言葉を合わせて「houhil(ホウヒル)」で、音なのかな?何なのかな?みたいな言葉を、造語として作ってタイトルにしました。ちょっと長くなっちゃった(笑)。

SHOWER:いえいえ、しっかり説明していただいてありがとうございます。最初はタイトルの意味も教えないでおこうという感じでしたもんね。

norahi:そうなんです。香川県の人に怒られるかなと思って。そこを拾うなよみたいな(笑)。

SHOWER:ははは。どうせならうどんを拾えみたいな(笑)。

norahi: そうです…。香川にはたくさん綺麗なものがあるから、何でそこを拾うのって感じに思われたらどうしようと思ったんですけど。私たちはすごく感動したので拾わせていただきました(笑)。

SHOWER:今回はお二人での展示ですけど、展示を二人でやるのは初めてなんですか?

norahi:初めてではないです。二人展は2回目で、グループ展を入れると結構な回数やってます。

SHOWER:じゃあ、二人でやる雰囲気というのは分かってたんですね。

norahi:はい、分かってました。お互いこういう絵を描くというのは理解しているというか。

Machida:友達としてずっと一緒にいるので、お互いの絵を見せ合ったりとか、今こういう時期だよねとか。描く上での悩みとかいろんな話をしてるので、どういう絵を描くかっていうのは分かっていて、とてもスムーズでした。

SHOWER:なるほど。二人でやるときの取り決めというのはありましたか?

norahi:屁を醸し出す。間接的に匂わすというか(笑)。

SHOWER:屁だけに(笑)。

norahi:houhilというタイトルも音の感じを大切にしたかったので、「houhilって何なんだろう?」という風に見てもらえたら面白いだろうなと思って。オナラとか放屁っていうのを直接的に伝わるような絵は描かないよねっていう確認はお互いにしました。

SHOWER:今回フライヤーで使ったメインビジュアルの作品は両方ともシルクスクリーンで刷ったものなんですが、統一したつくり方の作品を入れたのは意味があるんですか?

norahi:それぞれで描いたもので、メインビジュアルとして成り立つものを一つずつつくろうと話し合って、覚悟しました(笑)。

SHOWER:そんな覚悟が(笑)。

norahi:はい、ありました。統一させた作品をつくろうということだったので、同じ紙の大きさで一人一作品をシルクスクリーンでつくる。という感じで決めました(笑)。

SHOWER:同じ場所やタイミングで刷ったんですか?

norahi:いえ、それは各家庭で刷りました(笑)。

SHOWER:お二人の共通点でいうと、それぞれイギリスとカナダに1年ほどワーキングホリデーで行かれてたと思うんですけど、行く前後で作風や見るものに変化がありましたか?

Machida:そんなにはなかったですね。カナダに絵を勉強しに行くというよりは、寒いところが好きでそれを体感したいみたいな。そういう生活がしたいという衝動で行ったので、絵のタッチは全然変わらなかったんですけど、見る対象とか生活が変わったので、そういうところで見方は変わったと思います。

norahi:私もあんまり変わっていないという自覚があるんですけど…。元々は絵を描く衝動として音楽が根底にあります。イギリスには好きなアーティストが多くいたので行ってみたいという憧れの気持ちがありました。まだ海外に住んだことがない時に、私の絵を見てもらうと「外国に住んでたんですか?」とよく言われることがあって。
たぶん憧れでそういう絵になってるから、実際にロンドンへ行ったら、もっと外国かぶれした絵になるかなと思ったんですけど。帰ってきてもテイストがあまり変わらなかったので、根底にある音楽とかそういうものがずっと残って行くんだろうなと確信しました。
変に意識してるかもしれませんけど、行く前は「外国に住んでた人の絵っぽいですね」って言われるのが嬉しくもあり不思議だったものが、実際に行って帰ってきて「外国に住んでたからこういう絵なんですね」って言われないようにしたいなと思ってます。まあ1年しか行ってないですけど(笑)。

SHOWER:イラストを描くときに、どういう風にモチーフを決めてるんですか?普段から描き溜めているのか、展示に合わせて描き始めるんでしょうか。

Machida: 絵を描くためには、何か展示の機会があって場所について調べて、きっかけになる言葉とかを探して、本を読んでテーマを決めます。今回の場合だと、平賀源内さんが日本で一番最初にチューリップの花を咲かせたみたいなんですけど。薬草学などにも精通していた人なので、屁も香りとか花とか近いし、モチーフとしてすごく重なるところがあって。初めてチューリップの花を咲かせたという感じもすごく好きだったので、その他にも調べたり探して気になるものを描いていきました。

norahi: 私は言葉から描くことが多いです。展示は定期的にしたいなと思っているのでネタ集めとかはずっと意識しているつもりなんですけど。その場で、絵で描き留めるというよりは、言葉で残すことが多いです。小学校4年生から日記をずっとつけているんですけど、日記の文章から絵に起こすことが多くて。悲しかったりすると逆に悲しい気持ちってあまり人に出したくないので、日記とかに文章を書いてスッキリして、それをもう一回見返してそこから絵に昇華するというのが多いです。絵で笑いたいので(笑)。
なんとなく感じてるのが、悲しいことって絶対みんなどこかに持っていて。楽しい絵を描こうと思ってても悲しい想いはどこかしらに残ると思うんです。そこの部分が見る人にも、なんとなく伝わるんだろうなって感じます。あとは音楽の歌詞から想像したりすることが多いです。

SHOWER:norahiさんの絵からはポップな印象を受けるんですが、norahiさん自身も変にポップだと勘違いされてたことがあるんですよね(笑)。

norahi: そうなんです(笑)。私の絵で想像させちゃうんだと思うんですけど。「norahiちゃんて結構ポップだよね」って言われることがあって、人によってポップさに違いがあると思うので、どんな雰囲気だろうとずっと思っていたら、ある日、会社の女性の先輩に「多分好きだろうからこれあげる」って渡されたのが、幼稚園の子が好きそうな星柄の巾着で(笑)。周りからはこういうポップさに見られてるのかなと一時期心配だった時があります。

SHOWER:その巾着は今日も持ってますよね?

norahi:実家にありますけど(笑)。……これから使っていこうと思います。

SHOWER:使うんですね(笑)。
お二人は言葉や音楽から絵のイメージを得るという話でしたけど、今後描いていきたい絵とかテーマはあったりしますか?

norahi:今後もあまり変わっていかないと思うんですけど、音楽や映画に影響を受けることがあって。音楽はずっと憧れの存在で夢のあるものだと思っているので、音楽に関わったものをつくりたいと思っていて。そこからの影響はずっと消えない感じがあります。

Machida: 私は書籍や装丁に憧れていて。自分の作品だけでなく誰かの作品と一緒になりたいというか(笑)。

SHOWER:一緒になりたい(笑)。他のところから影響を受けつつ自分の作品をつくって、お互いの作品が補完したり良い影響を及ぼし合ってるような感じでしょうか?

Machida:そうですね。それに近いです。

SHOWER:お二人のこれからの作品もとても楽しみです。本日は、どうもありがとうございました!

※本インタビューは、2017年11月3日のアーティスト・トークを記録・編集したものです。

Date:2017.11.3

Interview by THE SHOWER GALLERY

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